陽太side




「まぁまぁ、今日はもうお開きってことでいいんじゃないですか?」


「いいわけあるかっ!!この人はワシたち佐伯組が抱える顧客なんやぞ!!」



あーーうるさい。

だってもうこの人、当分起き上がらなさそうだし仕方ないじゃん。

自業自得でしょ、こんなの。


絃ちゃんは無事に稽古の成果を発揮したし、そのまま走って戻って行っちゃったし。

残された俺が何とか空気を和らげてあげようとしてるのに。



「なによあの子、こわ~い」


「てか“うちの人”とか“私の大切な”って言ってたよね…?まさか那岐さんの…」


「そんなわけないでしょ?だってあんな子よ?」



そんな女のヒソヒソ話はネットより早い拡散方法だ。

さぁこれからどうしようかと考えていれば、マイクを手にして咳払いをしたのは佐伯のおねーさん。



「まぁ、そういうことだ。今後も天鬼組には仲良くしてもらいたい」


「姐さん!?なに言うてはるんや!?」


「そして、その男は佐伯組からも切り捨てる」



それは絃ちゃんに正拳突きと回転まわし蹴りを金的に食らい、仕舞いには背負い投げを呆気なくされてしまった男のこと。

そいつを切り捨てると、佐伯のおねーさんは言っちゃってるけど。


まぁもちろん「なんで?」って感じだ。


だってあんた、絃ちゃんのこと嫌いでしょ?それに佐伯組が御抱えする社長さんだってのに。



「こいつはいろんなところから金をふんだくるネズミ講の大元だ。
大方、天鬼 絃を採用したのもその手口だったんだろう」