***


 それからあっという間に一ヶ月が過ぎ、一人で生きていく術も無いまま、だらだらと日にちだけが過ぎていった。


 そして今日はリミルに連れられ城下町へとやって来た。


 今日は市が立つということで沢山の人々で賑わいを見せている。それは日本のお祭りのようで、屋台には美味しそうな食べ物や雑貨などが並んでいた。


 愛来は目をキラキラと輝かせてはリミルに見たこともない食べ物の説明をせがんだ。

「お嬢さん方うちのセージ食べて行きなよ。美味しいよ」


 そう言った屋台のおじさんが手に持っていた食べ物は美味しそうに焼かれたソーセージのようだった。

「おじさんそれ二つ下さい」

 リミルがセージを買ってくれたため、近くにあったベンチに座ってセージを口へと運ぶとパリッという音と共に口の中に肉汁があふれ出し肉のうまみが口いっぱいに広がる。

「リミルこれとても美味しいね。焼きたてだから熱々で香ばしくて何個でも食べちゃいそう」

 楽しそうにセージをほおばる愛来の姿にリミルはホッと胸を撫で下ろした。

 最近の愛来は一人で塞ぎ込むことも事も多く、一人で何やら考え込んでいた。ウィルもその姿に心を痛めており気分転換にとリミルが外に連れ出したのだった。

 セージを食べ終えるとリミルが町の真ん中にある広場まで連れてきてくれた。そこには大きな噴水があり時間によって水が踊るように吹き出す魔法がかかっているらしく、観光の名所となっている。

「もうすぐ噴水ショーが始まりますのでこちらでお待ち下さい。私はそこのお店で買い物があるので愛来様は絶対にここから離れてはダメですよ」

 そう言ってリミルはお店の中へと入っていった。

 それから少しして噴水ショーが始まった。噴水が出たり止まったりしながら形を変えていくと、それがペガサスや妖精などにも変わり踊り出す、まるで本物のペガサスや妖精のように水が動きまわる。

すごい!!

魔法ってホントにすごい!!

最後は大量の水が噴水の上に集まるとそれが一気にはじけ飛び水蒸気となって消え、噴水の上に大きな虹の橋が架かった。





「「「わーーーー!!!!」」」




沢山の人々から完成の声が上がったその直後、それが悲鳴へと変わった。



「キャーー!!!!ガギル・ドラコよ!!」


 人々が噴水の前から逃げ惑う。愛来は皆がガギル・ドラコと呼んだものをジッと見つめていた。それはフワフワと宙に浮いていてゆっくりと愛来に向かって飛んでくると可愛らしく「キュイ~」と鳴いてみせた。

 かっ、かわいい!!

 大きさはサッカーボールより少し小さめで、頭に小さな三角の耳がついている。色は真っ白のもふもふ、つぶらな瞳が超キュート。

 愛来は両手を広げると「怖くないから、おいで」と、もふもふを呼び抱きしめた。

 そこへ青い顔をしてやって来たのはリミルだった。手には木刀を握り絞めガタガタと震えている。

「愛来様危険です。すぐにお逃げ下さい。ガギル・ドラコどうしてこんな町の真ん中に……結界を通り抜けてくるなんて」