「それ、新規の私にマウント取ってんの⁉」
「新規てなんだよ。先輩のファンかよ」
「そーよ! 黒瀬先輩は推しなの!」
「推しにカツサンドを買ってこいって……」
「もう! カツサンドの話はいいでしょ⁉」
購買の入口付近で言い争っていると、人混みから黒瀬先輩が袋を持って出てきた。
「お待たせー。はいどーぞ」
「「ありがとうございます!」」
カツサンドを受け取り、お金を渡す。
あぁ、これでお昼の授業も頑張れる……。
「先輩! よかったら一緒に食べませんか?」
「お! いいよ! 中庭空いてるならそこで食べよっか」
帰ろうとした瞬間、鼻につくワントーン上がった声が聞こえた。
もちろん、声の主は詩恩だ。
なぬ⁉ 一緒に食事だって⁉
詩恩め、ファンの私がいる前でまたマウント取るわけ⁉
「それなら北松さんも一緒に食べない?」
「……へっ?」
いいい今、「一緒に食べない?」って言いました⁉
私の空耳じゃないですよね⁉
「いいんですか⁉」
「もちろん!」
「ありがとうございます……!」