「あー……いないって伝えて」

「えっ、でも……」

「いいから。断ってきて」



な、な、なんだってーー⁉

ちょっと! 客が来てるのに顔も出さず門前払いする気⁉
こそこそ小さい声で話して……!

全部聞こえてるっつーのー‼



「ちょっと詩恩! せめて顔くらい出しなさいよ!」



耐え切れず、勢い良くドアを開けた。

後ろの席で面倒くさそうに溜め息をつくその姿に、ますます怒りが募る。

教室に入り、彼が座っている席の前に立つ。



「ねぇ! なんで嘘ついたの⁉ そんなに会いたくなかった⁉」

「……その格好は何だよ」



冷たくツッコまれ、ハッと我に返る。

しまった!  おしとやか作戦が……!



「黙ってたら様になってたのに、さっきの大声で台無しだな」



溜め息混じりに口を開いた彼は突然席を立ち、「ちょっと来て」と私の腕を掴んで教室の外に連れ出した。



「ちょっと! 放して!」



廊下をずんずん歩く彼。
腕を振りほどこうするも、全然動かない。

男の子ってこんなに力強いの?


階段まで移動したところで、ようやく立ち止まり……。



「いつもは自分から掴んでくるのに?」



振り向いて不敵な笑みを浮かべ、掴んでいる私の腕を見せてきた。