「驚かせてごめんね」


保健室で目を覚ました玲子に梓は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


誰にも秘密を打ち明けるつもりはなかったのに、厚彦が勝手にバラしてしまったのだ。


「ううん。さすがにビックリしたけど、もう大丈夫」


玲子はそう言うが、顔色はまだ良くない。


ついこの前死んだ同級生が親友に取りついているのだから、驚かない方が異常だ。


「でも、幽霊とずっと一緒にいて梓は大丈夫なの?」


「うん、平気。元々霊感がないせいか、ちょっと寒いなぁと思うくらいだよ」


梓はそう答えて笑ってみせた。


実際に厚彦が近くにいることで困っていることはほとんどない。


しいて言うなら毎回笑わせてくることくらいだ。


「ここにいるんだよね?」


玲子が、梓の右隣のなにもない空間をマジマジと見つめている。


「逆だよ逆」


厚彦がいる場所を教えてあげると、玲子は梓の左隣を集中して見始めた。


目を細めたり、手を伸ばしてみたり。