「敦子―! 今日遊んで帰らない? 昨日新しいゲーム買ってもらったの!」


放課後になると同時に蒔絵が声をかけてきた。


「ごめん、今日も早く帰らないとおじいちゃん心配するから」


あたしは早口に言い、鞄を持った。


「そういえば敦子の家っておじいちゃんと暮らしてるんだっけ」


「うん。幼稚園の頃両親が事故で亡くなって、それ以来ずっとなの」


「そっか……」


「そんな暗い顔しないでよ。両親が死んだ記憶なんて、ほとんどないんだから」


あたしはそう言って笑った。


あたしが物心つく前に両親はいなくて、すでに祖父との2人暮らしが始まっていた。


あたしの祖母はもっと早くに亡くなっていたらしくて、写真でしかその姿を見たことがない。