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「鈴ちゃん、どこに行ってたの?」

「ごめんなさい。御手洗いに行ったときに、少し不審な人を見かけまして…」

「大丈夫なの!?!?」


あたしの肩に触れて心配そうな顔をする母上。力が弱々しいな…


「大丈夫です。志木をすぐ呼びましたので」


「本当に…鈴ちゃんは、志木が好きね」


よかったわ。母上は笑った。
違うよ

志木はあたしの執事や
志木はあたしの…鈴じゃなくて、あたしの執事やで


これだけは…譲れへんかったんや

いくら大事な妹の願いでも


……


「お姉ちゃん、なんでお姉ちゃんには、専属の執事がいるの?」

「専属ではございません。ただ私が杏様に尽くしたいだけです」

「尽くす?じゃあ私は…?志木は私には尽くしてくれないの?」

「……私には杏様しかいないんですよ。東堂にはお世話になっておりますが、私の主人は杏様だけ」


あたしは志木と鈴が話してるのを部屋の外でよく聞いた。

小さい時に全てを諦めた

親に愛されない
家に愛されない
誰もあたしに期待もしてない