海との関係が良くなっただけで世界は全く違う色になった。


普段は無視していた道端の花の存在に気が付いたり、信号を渡っているお婆さんの手を引いてみたり。


心が軽くておだやかでいるだけで、ここまで生活にゆとりができるなんて思ってもいなかった。


「星羅今日も嬉しそうだね」


教室へ入るとすぐにコトハが声をかけてきてくれた。


「うん。毎日海とメッセージとか電話とかしてるの。こんな風にいつもあたしを気にかけてくれるなんて初めてのことだから、嬉しくて」


「そうなんだ。よかったね海の人格が変わって!」


コトハは本当に嬉しそうな表情でそう言う。


でも、あたしにはその言い方があまり好きではなかった。


「ねぇ、コトハにはあたしと海の出会いを話したよね?」


「うん。聞いてるよ?」


今更どうしたのだろうという様子で首をかしげている。