少しの、ほんの少しの時間が流れた。


車は中浜町の中心地に向かって走っている。


その車内はというと、さっきとは打って変わってお通夜のような静けさだ。


「ご、ごめんなさい。だけど、もしも引き返してまたこの町に入ったとしたら……私は、何を希望にして生きれば良いかがわからなくなるから。残しておきたいのよ。たとえ絶望が待ってるとわかっていても、ほんの僅かな希望を」


未来さんの言葉に、春瑠さんは無言のままで。


でも、その気持ちは痛いほど私にはわかった。


「確かになあ。何もかも希望がなくなったとしたら、何のために生きてるかわからないもんな。イーターとかクリーチャーとかいるし、俺達は食物連鎖の頂点じゃなくなったんだもんな」


イーターの次はクリーチャー?


次から次へと、怪物に名前を付けたがるよね、桐山は。


「雄大がいたら、『クリーチャーとは随分ベタなネーミングだな』とか言ってただろうな」


窓の外を眺めながら、少し寂しそうに真倫ちゃん。


「……別にいいだろ。なんだよ山瀬。お前、海原のことが好きだったのか? 随分仲が良かったみたいだけどさ」


「バーカ。ただの幼馴染だよ。家がさ、近所なんだ。それに私は……」


そう言って、真倫ちゃんはチラリと私の方を見た。