「パパとママはね、小さい頃からいつも一緒にいて、パパはずっとずーっとママだけが大好きだったんだよ」

消毒薬のつーんとした匂いを見にまとったパパが私は大好きで、膝の上にちょこんと座り、パパとママの恋物語を聞くのが私は大好きだった。

パパは晒名(さらしな)総合病院の副医院長、祖父が医院長を務める病院に、私が産まれるときに、K 大学病院を辞めて移ってきた。

いずれはこの病院を私たち兄弟がつがなくてはいけない。

双子の兄・颯馬(そうま)は、手先が小さい頃から器用で周りから外科医として期待されていたが、颯馬はママが祖父から譲り受けた洋菓子店の甘い匂いが大好きで、パティシエに強い憧れを抱いていた。