「花蔵恭……!」



バンッ!と。

大げさな音を立てて屋上の扉を開く。接続部分が錆びてゆるんでしまっているから、強く押せば簡単に扉はくるりと回転して外側の壁に激突した。



おかげで扉の外側だけ傷だらけ。

先生にばれたら絶対怒られるわよね、これ。



まあ、わたしが静かに開けないのが悪いんだけども。



だって静かに開けたら絶対気づいてくれないし無視される。

誰に?って、そんなの。



「毎回毎回うるせえんだよ、お前……」



最初に大声で呼んだ、彼に決まってる。

花蔵恭。うちの中学きっての問題児。




何が問題かって言われたらまず髪色。

派手すぎる金髪は、金髪歴の長い某人気アイドルでもそんなにこまめに染めてないわよ、ってぐらい頻繁に染め直されてる。



だからいつもキラキラしてて、色落ちしているのを見たことがない。

そして次に、授業に出ている日数。……いや、もはや花蔵恭の場合は、日数っていうより時間?



サボりは通常運転、遅刻はもはや日課。

授業に出ているのを見たことがない。というか教室にいるのを数回しか見たことがない。



彼は義務教育じゃなかったら、間違いなく中学を卒業できていないと思う。

大体屋上にいて、雨の日はいつも旧音楽室。



今日は絶賛快晴だから、屋上の日である。



「だってうるさくしなきゃ起きないでしょ?」



「寝てんだよ邪魔すんじゃねーよ」