冬が来て、春が来て、夏が来て、そしてまた秋が来て・・・俺の有頂天の日々は続いた。


「行ってらっしゃい。」


朝、妻の笑顔に送られて出勤。満員電車に揺られて、ややお疲れ気味に出社すると


「おはようございます。」


と今度は穂乃果の笑顔でやる気回復。仕事にはもちろん全力投球。日に日に頼もしくなる穂乃果のアシストが心強いし、疲れた時には、人目を忍んで、彼女を抱きしめて、エネルギーチャージしてるのは、もちろん誰にも内緒。


定時に上がれることなんかあり得なくて、8時に会社を出られれば


「お、今日は早いじゃん。」


という感覚。でも、そこからまっすぐ帰ることなんかまずない。同僚や部下と呑みに行くことも、もちろんあるけど、時間を惜しんで穂乃果とアフター5を楽しむ方がやはり多い。


かなり遅くなって帰れば(いつも遊んで帰ってるわけじゃないよ)、子育てや家事でてんてこ舞いのはずの妻が、先に休んでてっていう俺の言葉にも関わらず、必ずお出迎え。


事前に連絡してない限り、妻の用意してくれた夕飯は、何時になっても必ず口にした。義務感なんかじゃない、俺は妻の料理にガッチリ胃袋掴まれてたから。


週末だって、出勤を余儀なくされることは少なくなかったけど、それでも家族サービスや妻へのいたわりは怠らなかったつもりだ。もっともその間に、穂乃果とのデートもしっかり混じってはいたが・・・。


妻や家族に対する罪悪感はなかったのかって?正直言って、最初の頃だけだったなぁ。慣れもあったろうし、何より出来る範囲ではあるにしろ、妻や家族を精一杯愛しているっていうつもりでいたから。


バレたらまずいとは思ってたけど、バレるようなヘマは絶対しない自信もあったし。


今にして思えば、根本的なことを間違えていたんだよ。当時の自分が、ただただ恥ずかしい。


だけど、あの頃は、この「幸せ」がずっと続くと、信じて疑ってなかった。