ここは茉莉の家。
カーテンを閉めてない窓からは優しく月の光が差し込み、茉莉の白い肌を照らす。
俺は、そんな彼女の肌に自分の肌を重ねる。
「茉莉……」
「……っ」
茉莉は肌が俺の肌に触れる度に、鼻がかかった声を漏らす。
この時だけ……この時だけ、茉莉の声を聴くことが出来るんだ。
〈もう帰るの?〉
事が終わって俺が服をキチンと着ると、茉莉は手を動かした。
茉莉は話せないから、手話で言いたいことを伝える。
聴力を失っていているから、言葉の発音が分からないらしい。
だから茉莉からの“好き”や“愛してる”なんて言葉は全部手話。