プロポーズを受け入れたあと、家族がそわそわした様子で待つ居間に戻ると、一柳さんはさっそく皆に挨拶をした。

私は泰永茶園のためだけじゃなく、自分のためにも結婚を前提にお付き合いをしたいと思っている。そのことを告げたら、陸はいつもの調子で盛り上がり、玄にいと父は心配しながらも応援してくれた。

唯一、納得しないのは母だ。


『希沙、本当にいいの? ふたりの間には、まだ愛があるわけじゃないんでしょう?』


猜疑心たっぷりの厳しい表情で確認してきた彼女に、私は『それは、これから育んでいこうかと』と返した。

マイペースな答えを聞き、母はとても不安そうにため息をついたが、この反応をされるのも致し方ない。

そのとき、私の隣に座る一柳さんが、家族の前でも相変わらずの無表情で言った。『そのために、希沙さんと同棲させていただきたいのですが』と。

これはふたりで部屋にいたときに提案され、私はすでに了承したことだった。

一柳さんには結婚だけでなくビジネスの計画も当然頭にあり、煎茶道の作法を広める講師として、彼が支配人も兼務している施設に来てほしいそうなのだ。