彗side


「イッテェ!」

「ハイハイ動くな動くなー」


今日は一日この元医者の手当てを受けている


「元医者って言うなよ」

「間違ってないだろ」


なんか色々あって仕事をやめたらしい

どーせ女絡みだろーけど

まあそんなことはクソほどどうでもいい


「で、海は?いつも一緒なのに今日はいないんだね」

「さっきまでいたよ。今は学校行ってる」

「学校?あいつが?」


珍しいと言った顔を俺に向ける

しらねぇよ行きたきゃ行くだろ


「ちょっとって言って出てったから…まあ、あいつ絡みだろうな」


おそらくトンボのとこに行ったんだろう


「おお〜…ま、詳しくは聞かないけど彗も男の顔になったなぁ」


は?なんだよそれ


「あいつって女の子?」


なっ!!

なんでわかったんだよ


「あっはは、ビンゴっぽい〜」

…このくそ医者が

「怖い怖い、やめろってその顔。冗談だよ」


「彗さん。シノセ…俺らのこと探してませんかね」

消毒のしみる痛さに顔をしかめながら浜田がつぶやいた


…そんな気はする

俺たちがいないことに焦って、もう会えないかもとか考えてそう


「俺…早くシノセのとこ行きたいです」



「え、は、浜田?」

ヤブ医者が目をパチクリさせる


「俺は…シノセが好きなんで。一刻も早くあいつのとこいって抱きしめたいっす。」


浜田の人より大きな目が俺を捉える


…多分この言葉に込められた意味は

俺への宣戦布告

自分のものにするために行動を起こすから
という、浜田の宣言


「そうか…あいにく俺もそのつもりだ」

「競争っすね」

「…そうだな」


浜田は歯を見せて笑う


競争…だな