その日、出勤すると、優美がまた寄ってきた。

「まだ付き合ってないんなら、あの人は
やめた方がいいわ。
私が、もっと由里子に相応しい人を紹介して
あげるから。」

もっと相応しい人って何?
どんな人なら私に相応しいって言うの?

思ってはいても、私は、それを本人には言えない。

だから、私は違う答えを返した。

「あのね、私、昨日、あの後、お返事を
したの。
私、宮原さんとお付き合いすることに
した。」

その途端、優美の表情が変わった。

「そうなんだ。
宮原さんが本気で由里子の事を好きだと
思ってるの?
常識的に考えなさいよ。
あの見た目だよ?
他に彼女がいるに決まってるでしょ。」

優美の意見は、私の心の底を大きく抉ってくる。

でも、私は宮原さんを信じると決めた。

「優美の言いたい事は分かるよ。
私だって、最初は宮原さんみたいな人が
私なんかを本気で相手にするはずがない
って思ってた。
でも、宮原さんは私しかいないって言って
くれたの。
だから、私は彼のその言葉を信じる。」

私はそれだけ伝えると、優美の返事を待たず、返却処理を終えた本をブックトラックに乗せ、1人、カウンターの外に出た。

棚に本を片付けながら、つい余計な事を考えてしまう。

『他に彼女がいるに決まってるでしょ』

考えまいとしても、優美の言葉が頭の中をぐるぐると回る。