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闇の果ては光となりて

第二章 チーム【feral cat】

カーテンのない窓から差し込む朝日に照らされ、眩しさにゆっくりと意識が浮上した。
昨日はあれから、もう遅いからと霧生が案内してくれた空き部屋で眠る事になった。
5畳ほどのベッドとタンスがあるだけの質素な部屋は、意外にも居心地が良かった。
知らない場所で眠れるのかと不安になったけど、布団に入って数秒で寝入った私は中々の図太い神経の持ち主だった。

「ふぁ・・・よく寝た」
上半身を起こして、大きなあくびをしながら腕を上げ背筋を伸ばした。
家と違ってビクビクしなくて済むことが、こんなにも穏やかに慣れるんだと実感する。
自宅の部屋で鍵をかけ眠り、トイレに行くのも音を立てずに移動していた。
義父に見つかれば、謂れのない暴力を振るわれるからだ。
あいつは、見えない所をいつだって殴りつけて来た。
自由になる自分の玩具のように。
昨日は、それがエスカレートして倒れた私に伸し掛かってきた。
思い出す、あいつの生臭い息と、身体を這いずり回ったあいつの掌。
「っ・・・気持ち悪い」
込み上げてきた吐き気に、慌てて両手で口を塞いだ。
あんな奴に・・・負けるもんか。
児童相談所から、あいつらに引き取られて以来、何度もそう思って生活してきた。

物心ついた頃には本当の父親は居なかった。
私が生まれる前に事故で亡くなったとお祖母ちゃんは言ってたっけ。
母親はそのショックで私の事を見る事が出来ずに、直ぐにネグレクトになったらしい。
一緒に同居していたお祖母ちゃん生きてた頃はそれでも、それなりに生活は出来ていて。
でも、お祖母ちゃんも病気で無くなり母親との生活になった途端に立ち行かなくなって。
近所の人が児童相談所に通報してくれるまでの数年間、やせ細り荒れた生活だった。
中学に上がった頃、母親が生活基盤が出来たと新しい父親と共に引き取りに来た。
まともな生活を送れたのは半年ぐらいだったかな。
母親のネグレクトが再開し、それと同時に義父からの暴力が始まった。

始まりはほんの些細な事だった。
虫の居所の悪かった義父に口答えをした事が開始の合図だったと思う。
母親や近所や学校にバレないようにと、狡猾な義父は目に見える場所は攻撃しなかった。
今でも身体に痣がいくつか残ってると思う。
出来るだけ義父との接触を避け、息を殺すように生きてきた。
母親の居る時に、食事を取ったりお風呂に入ったりして、彼女が仕事に出てる間は部屋に鍵をかけ過ごしてた。
でも、落ち着いて考えたら母親も義父からの虐待を、薄々気付いてたんじゃないかと思う。
それでも、何もしなかったのは彼女が私に興味を持っていなかったからだろう。
母親を恨んでいるか? と聞かれればそうでもない。
彼女はただ子供を愛する事が出来なかっただけだし。
児童相談所から、引き取られてからは必要最低限のお金は渡してくていたし、接し方を知らない彼女を責めても無意味だと思うんだ。

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