あの衝撃の運動会から、もう一週間が過ぎた。


今はちょうど学校のお昼休み。あたしと海莉はトイレに同伴して、教室まで戻る途中だ。


廊下には窓の外から日差しが燦々と射し込んで、床の上に黒い影と白い光のコントラストが浮かんでいる。


最近急にお日さまの勢いが強い日があったりして、少しずつ夏への足踏みが始まってる感じだ。


「そういえば海莉、日本史のテストはどうなったの? 答案用紙戻ってきてたよね?」


「赤点ギリギリでなんとかクリア。先生とは『徳川家光』は二度と無意味に使わないって約束で、無事に和解したよ」


「家光は封印されちゃったのか。これからどうするの?」


「大丈夫。家光は封印されても、あたしには吉宗がいる!」


グッと拳を握って不敵に笑う海莉に、あたしもつい声を上げて笑ってしまった。


三代将軍から八代将軍に鞍替えするわけね? さすがは海莉。


「ま、徳川将軍は十五代もいるからね。順番に使っていけば当分は……」


教室の手前で海莉が急に話すのをやめて、その場に立ち止まった。


それまでの笑顔から一転して無表情になって、廊下の向こうをじっと見ている。