ケータイ小説 野いちご

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世界で一番似ている赤色

思い出すことは罪ではない。






何重にも重なった純白のレースが、胸からウエストをきつく締め付ける。


そのレースは腰から床に向かって膨張しながら広がっていく。


まるで自分が白いオバケに捕らえられているみたい。



「似合ってるじゃない。やっぱり女の夢はこれよ。今日という日が来てくれて、本当に良かった……」

「あはは、泣くのはまだ早いぞ。でも、本当に綺麗だよ。今日はみんなにたくさん祝福してもらおうね」



私の姿を見て涙ぐむ母。優しく微笑みかけてくる父。


足元のレースにつっかえないよう、高いヒールに乗せた足を動かさずに笑顔だけを返した。


2人はほっとした表情になり、「じゃあ、新郎側の親族に挨拶してくるね」と言って部屋を出て行った。



母も父も嬉しそうにしている。


私の結婚を心から祝福しているのか、それとも、私の戸籍上に配偶者ができることを喜んでいるのか。どちらかは分からない。


ただ、私にとってこの選択は間違ってはいない。


昔の恋愛には負けるけど、私がそれなりに好きになった人なのだから。



そう言い聞かせながら椅子に座り、テーブルに重ねられている祝電や手紙に手を伸ばした。


レースの白いグローブを取り、色とりどりの封筒を開ける。


学生時代の先輩や後輩、今日来れない遠方の友達、小学校の頃の担任の先生。


次々と喜びと祝福の言葉が飛び込んでくる。


ありがとう、と心の中で感謝を伝えながら順番に目を通した。


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