「……準備できましたか」


声をかけられて、翠蓮は微笑む。


「ええ。―杏果、どう?」


「私も出来ました」


仕込んでみれば、凄く様になる杏果。


きちっと背筋を伸ばして、李家の輿の傍に立つ。


さすが、元・朱家の令嬢。


「では、改めて……」


杏果の存在を告げると、とても喜んでくれた怜世さん。


やはり、後宮は魔窟のようだ。


信じられるものを守るために、翠蓮には力がいる。


その為には―……。


「私は、李怜世と申します。これから先、全面的に貴女たちの後見として、動きます。杏果さん、何かあれば、私に言ってください」


「分かりました」


「そして、紹介致します。こちらは、私の弟の李桂鳳(リ ケイホウ)というものです。後宮で、全面的に貴女を支えていきますので、よろしくお願いします」


紹介された桂鳳殿は高く髪をひとつに結っており、優しい微笑みは、怜世さんにどことなく似ている。


つまり、美形である。


(最近、美形しか見てない気が……流星さんといい、この二人といい、黎祥といい……)


「よろしくお願いしますね、翠蓮殿」


「あ、はい。よろしくお願い……ん?」


「どうかされましたか?」


「怜世さん、」


「はい」


「今、後宮で、って言いました?」


「?、はい」


「桂鳳さんは、男性でしょう?」


今の後宮に入れるのは、黎祥と宦官くらいなもので……。


あとは、許可と監視が絶対なはず。