ケータイ小説 野いちご

【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―

第二章 宵越の記憶
宵闇と宵明け




「串焼き素麺(ソバ)、ふたつね!」


「あいよ!」


昼時で賑わう店の中、翠蓮と黎祥は向かい合って座る。


翠蓮がそう声を張りあげると、忙しそうに動き回るおばさんが返事して。


「あれ、まぁ……誰かと思ったら、翠蓮ちゃんじゃないか」


久しぶりだねぇ、と、人の良い笑顔を向けてくれるおばさんは、この店の店主の奥さん。


「おばさん、久しぶりね」


翠蓮がそう微笑んだ時、


「翠蓮ー!」


「結凛(ユイリン)」


寄ってきたのは、噂が大好きな幼なじみの結凛。


おばさんとおじさんの一人娘で、翠蓮の大事な友達。


「薬、ありがとね!」


実質、会うのは一週間ぶりくらいである。


先日、彼女は薬を取りに来たからだ。


「ううん。それよりも、ごめんね。診察に来れなくて」


「何言ってんの!翠蓮は下町で人気の薬師なんだから、仕方ないって!ってか、翠蓮以外は皆、診てもらおうとしないからね〜」


困った、困った、と、元気よく笑いながら、結凛は翠蓮の顔を覗き込む。


「それより、翠蓮、顔色悪くない?大丈夫?」


「そう?別に、特になんとも……」


「ご飯、食べてる?」


「お腹すいたから、ここに来たのよ?二年前の食べないくせは、だいぶ、治ったと思うのだけど……」


「食事は命の源っていうあんたが食べなかったら、みんな、心配するんだから」


お姉さんみたいに、叱ってくる結凛。


この真っ直ぐさに、何度救われたか。



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