ケータイ小説 野いちご

【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―

第一章 宵明の邂逅
十七歳の春




「……お前は、馬鹿か?」


「そんな顔で、言わないで。祥基」


雨が上がって、三日。


黎祥が翠蓮の家に来て、三日。


おばさんの用事で訪ねてきた祥基は、黎祥の存在を認めた瞬間、翠蓮をとっ捕まえた。


「はぁ……馬鹿としか言えねぇ……何してんだ?お前」


「困った人に手を差し伸べるのは、当然のことでしょう。何も悪いことはしていないと思うのだけど」


「いや、あの男は……」


祥基は大きな溜息をつき、前髪を掻き上げる。


その時。


「翠蓮、話し中すまない。洗濯物、取り込んだのだが」


「お、ありがとう。黎祥」


「他に、何かすることはあるだろうか」


「そうね……って、大怪我しているんだから、少しは休んでおきなさい。あとは、私がやっておくから」


黎祥が取り込んだ洗濯物を受け取って、翠蓮がそう言ったけど、


「いや、世話になっている以上、何かしないと気が済まないんだ」


と、黎祥は何かしたくてたまらないそうで。


「じゃあ、買い物に行ってもらおうかな」


翠蓮からしても、正直、男手があることはとても大助かりである。


「分かった。しかし、外に出るのなら、何か、頭に被るものが欲しいのだが……」


何を言っても、首を縦に振る黎祥。


買い物も承諾してくれた黎祥は、どこか不安げにそう言った。


「被るもの?外套でいい?」


翠蓮が尋ねると、


「助かる」


と、黎祥は微笑む。



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