後宮で起こる事件に朝廷が騒いでいる頃、それに奔走する順翠玉を推薦した皇帝付きの順大学士―嵐雪は目の前の主を見て、頭を抱えていた。


「陛下、お疲れならば、仮眠を取ってください」


「……いや、いい」


眠そうなのに。


ここ数日、いや、どうも、秋遠様を訪れた日ぐらいから、陛下の様子はおかしくて。


理由を聞いても、彼は答えないし。


本当、困った主人である。


「そんなことよりも、儀式の件は―……」


儀式というのは皇帝の座についた時に、行わなければならない行事である。


龍神から認められた、建国者の身につけていたと言われている紋章を受け取るのが、儀式の中の重要儀法。


女王の遺体に触れ、祝詞を唱え、龍神への忠誠を誓う。


それで認められれば、その者は真の王となれる。


先帝は行わず、先々帝ぶりの儀式の準備は着々と進んでいた。


「滞りなく」


嵐雪は複雑な心境で、頭を下げた。


自分のことを、"そんなこと”で片付けてしまう人。


寂しい人だ。本当に。