詩side

アラームの音がする前に私は

起きました…

いえ、起こされました

顔面にダイブしてきた子猫ちゃんによって…

それにしても朝から元気いっぱいで

なによりだ!

私の顔面にダイブした後は

部屋の中をトコトコと歩き回り

満足したのか、私の愛用する

もこもこタオルケットで眠ってます

かなりの自由人…ううん、自由猫かな?

それを横目に学校へ行く仕度をする

昨日は律だけに里親さん探しの

お手伝いを頼んだけど

ここは数打ちゃ当たる戦法で

錬や奏、奈留や冬にもお手伝いを

お願いしてみようかな〜?

私ももちろん探すけど

ここに越してきてからの知り合いが

お友達しかいないし

話せないから無闇に声も掛けられない

ん〜…ビラを配るとか?

だったら写真が必要だよね…

うん、携帯で写メ撮っとこ〜

ーパシャパシャッ

よし、可愛く撮れてる撮れてる!

これをみんなに見せて

相談してみよう〜

子猫ちゃんに行ってきますの挨拶をして

いざ出発っ!!

…で学校に着いたものの

まだ誰も来てないよ〜!

現在の時刻は、7:50ー

HRは8:30からだから

探険でもしてみようかな

でも…迷子になったら?

学校で迷子なんて…と思ったそこの方!

私は類稀なる方向音痴なの!

無闇に歩いて教室に戻れないとなれば

うぅ〜…考えるだけでも恐ろしい

ここはひとつ、漫画あるある

屋上に行ってみよう!

鍵がかかってたら降りればいいんだし

ふふふふふ〜ん!

屋上到着!

開いてるかなぁ…

ーガチャ

あれれ?簡単に開いちゃった…

失礼しま〜す…

心の中で挨拶して扉を開け放った先

うわぁ〜!すっごく空が近い!!

ここでお昼寝とかお弁当食べたら

気持ちいいだろうなぁ…

HRまでまだ30分もあるし

夢のひとつ、屋上でゴロンでも

してみようかな!

ふぅ〜気持ちいい〜

なんだか空に浮かんでるみたい…

見えるのは青空と白い雲だけ

目を閉じれば木々の擦れる音と

鳥の鳴き声だけ…

気持ち良すぎて眠たくなる〜…

でも眠ったら起きる自信がない

けど…

少しだけ、少しだけ…

ーーーー
ーーー
ーー

「ーーーー!」

「ーーー!!」

…う〜ん、何か聞こえる

だぁれ〜??

ゆっくり目を開けてみると…

あれれ?みんなの声が聞こえて

きたような気が…

しかもすっごく近くで見られてるような…

ぼんやりする頭をゆっくり起こして

目を擦る

ぼや〜っとする視界がどんどん

クリアになって…ん?

あ〜みんなだ〜!

寝起きだから締まりのない顔になっちゃう

≪おはよう〜≫

口を動かしてペコッとお辞儀して

朝のご挨拶です

ん?あれ?

1人多い?

お友達になったのは律を除けば4人…

だけど視界には…5人

あれれ?寝ぼけてるのかな、私

1人ずつ指差し確認!

錬!奏!奈留!冬!

最後の1人を指差してコテンと首を傾けて

…???

≪あなたは、だぁれ?≫

ジーッと見つめて思い出そうとしても

分からない…

1番近くにしゃがんでる錬の袖を

クイクイ引っ張って尋ねる

もう1人を指差してコテンと首を傾げた

錬?…赤くなって固まってる

奏、奈留、冬の順番に尋ねても

みんな錬と同じ反応…

誰も答えてくれない〜!

ムムム…

よし、直接尋ねてみよう〜

ートコトコトコ

私が向かう先にいる男の子は

ジッと私を見つめてるだけで

一言も喋らない

わぁ〜すっごく大きい!

一体何を食べたらそんなに大きくなるの?

同じ人間とは思えない

私にもちょびっと分けて欲しいな〜

それにすごくイケメンさん!

短い黒の髪はサラサラ揺れて綺麗だし

目も髪と同じ黒…黒曜石みたい

鼻もスーッと高くて

唇も薄すぎず厚すぎず

あれ?目元…目の下にほくろ?

ん?ゴミ?

顔が遠くて分からない〜

私が観察する間も何も喋らない男の子に

聞きたいけど、今はノートもペンも

教室の鞄の中だし…どうしようか?

みんなの中に紙とペン持ってる人いるかも!

そう思って振り返ると

みんなが一斉に動き出した!

なんか、だるまさんが転んだしてるみたい!

1番近くに来てくれた錬の袖を引っ張って

彼を指差し、首を傾げてみせた

伝わってる?

錬は1度頷いて教えてくれた

「俺らの仲間の1人で
流川北斗(るかわほくと)だ。
ちなみに詩と同じクラスだぞ!

昨日は屋上でサボってたから
いなかったけどな!」

そっかぁ〜だから分からなかったんだ!

うん、納得!

錬に大きく頷いてみせた

初めましての意味を込めて

笑顔でお辞儀!



っていうか…今何時?

携帯の時刻を見て、あらビックリ!!

ーー9:10

錬にそれが見えるように掲げて

袖を思い切り引っ張った

急がなきゃ〜!遅刻遅刻〜!!

先生に怒られるよね、絶対!!

あらゆるジェスチャーをしても

伝わってないのかピクリとも動かない!

ん〜…困った

ノートとペンがないと会話出来ないから

こういう咄嗟の時困るな…

詩、がっくし…

その時頭上から天の声

奏だ!

「詩ちゃん、授業に遅れるから
早く行こうって言ってるんだよね?」

大きく頷いた

「それが伝わってない、伝わらないから
どうしよう?って思ってるんだよね?」

大きく2度頷いた

頭をポンポンして奏が柔らかく笑った

「ちゃんと僕らには伝わってるから
安心してね?」

そっかぁ〜良かった〜

伝わってたんだねぇ〜

胸に手を置いてふぅ〜と息をついた

ん?おかしくない?

伝わってるなら急がなきゃいけないって

分かってるって事でしょう?

思わず眉をひそめる

「なぜ行かないのかが
分からないんだよね?」

今度は奈留だ

奈留に頷いてみせた

「答えは簡単だよ〜!自習だから!
そして…僕らから詩ちゃんにと〜っても
大切なお話とお願いがあるから
ここに居て欲しいの!」

大切なお話とお願い?

なんだろう?