ケータイ小説 野いちご

独占欲高めな社長に捕獲されました

5 おばあちゃんはゆっくりと話す


 いったいあれは何だったのか……。

 けたたましく鳴る携帯のアラームを止め、むくりと起き上がる。周囲を見回すと、狭い部屋に小さなローテーブル、その上に飲みかけのお茶が入ったペットボトル。コンビニのうどんのカップまで残っている。

 昨夜コンビニに寄ってなんとか帰ってきたところまでは覚えているけど、とにかく混乱していたから、記憶が途切れ途切れだ。

 おぼつかない足取りでシャワーを浴び、着替える。メイクをしようと鏡を見た時、唐突に昨夜の光景がフラッシュバックした。

 鏡の中で、西明寺社長が私を抱き寄せ、キスをする。

「あわわわわわわわ……」

 古い陶器の洗面台を掴んでしゃがみこんでしまった。勝手に浮かんでくるビジョンを振り払おうと縦に横に頭を振りたくっていたら、洗面台の底にぶつかった。

「ぐはあ」

 頭を抱えてうずくまる。ぶつけた衝撃で、舌も噛んだ。痛い。このまま死ねそうな気がする……。

 やっぱり、全部夢だったんだ。そういうことにしよう。あのセレブ社長が、こんなマヌケな私のことを本気で相手にするわけないじゃないか。


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