「……母上……?」

ふと、黒藤さんの声が揺れた。

「黒ちゃん? どうしたの?」

ママが呼びかける。

水鏡を見つめる黒藤さんは、だんだん目を見開いてゆく。

ママには水鏡は視えない。私は、黒藤さんが何に驚いているのかと、もう一度水鏡を覗き込んだ。

そこに映るのはさっきまでと変わらず、ママと同じ顔をした女性――え? 今……

「くろとさん……紅緒様が……」

「………」

黒藤さんは私には答えず、拳を握って水鏡を消した。

水滴は床に落ちることなく空中で霧散した。

「真紅、紅亜様、病院に行く」