「ワシや倖雷の教えに背くか?」



倖雷っていうのは父のことだけど、かれこれ1年近く教えを受けていない。



ってか、金輪際受ける気にもなれない。



坂下は多少アドバイスするものの、私の好きなように書かせてくれる。



だから今展示してる作品は、坂下の師匠である福沢先生の息がかかってる…ってことになるのかな。



多分ジイサンは、それが気に入らないのだろう。



桐生の人間が、ライバルに教えを乞うなんて…。



ジイサンのプライドが、許さないはずだ。



「ってか、ジイサンに教わったこと無いけど?」



私の呟きが耳に入ったのか、ジイサンは手を振り上げた。



「この欠陥品が、口答えするか!?」



ぶたれる!!



そう思って目をぎゅっと閉じたものの、頬に痛みは走らなかった。