『兄貴はまだかなー?』

昨日、アルと共に地上へ降りると、突然目の前に、大剣を持った男が現れた。

そして、男は自分に向かって大剣を振り下ろした。

思わず飛び上がって避けたが、男も飛び上がり、爪に乗って、そこから勢いよくまた飛ぶと、背中へと降り立った。

だが、アルが男に槍を突き、二人は自分の背中で打ち合っていた。

正直、いつ大剣で切られたり、槍で突かれたりするのか分からなかったので、恐怖しかなかったが。

アルに降ろすよう指示され、急降下し、ギリギリ地面へと近付くと、アルは飛び降り、一度龍の谷へ帰り、山の頂上で待っていろと言われた。

『薬草、ちまっとしてるから、結構大量に持ってきちゃったな』

もしもの時のためにと、薬草を取ってくるよう言われたので、龍の谷の洞窟に積まれていた薬草を鷲掴みにして持ってきた。

途中、爪の隙間からいくつかこぼれ落ちたが。

『しかし、あいつ……何か嫌な気配したな』

男の纏う気配とでも言うべきか、何やらただならぬ雰囲気だった。

本能的に、危険だと思う相手。

『兄貴は大丈夫か?……まさか、殺られたりしたんじゃ……いや、兄貴はスッゲー強いんだ。きっと大丈夫だよな!』

龍の谷の守護を任されているだけあって、アルは強い。

他の龍と互角にやりあうだけの力を持っているのだから。

『!……あいつだ』

昨日アルと打ち合っていた男が、こちらへ向かってやってくる。

『やばい、隠れなきゃ!』

だが、隠れられそうな所はない。ならば、遥か上空へと上るしかないだろう。

『くそっ。まだ兄貴も来てないのに。てか、あいつ傷一つついてないし……ええい!考えるのは後だコンチクショー!』

翼を力強く動かし、高く高く舞い上がる。

その光景に、男が気付いていない筈はなかった。