レインがレオンの弟子となり、家事の手伝いをしたり、勉強を教わったりしはじめて、早三日。

今日はこの国の歴史を教わっていた。

「レインは、ティアナからどれくらいこの国のことを教わったんだい?」

「えーと、神龍様が元々この国を治めていたんだけど、神龍様に支配されることに不満を持った人達が、反乱を起こして、でも神龍様や他の龍に勝てなくて、皆諦めちゃったんだよね?でも、ある日一人の女の子がやって来て、神龍様を操り従わせたの。それで、国は人間が治めて、神龍様は国を守護する存在になったんだよね?」

ティアナから聞いた国の成り立ちを話すと、ふとレインは疑問を持つ。

「そういえば、何で皆不満を持っちゃったのかな?神龍様が、皆をいじめたのかな?」

「……この国では、レインの言った歴史が濃く刻まれている。けれども、覚えておくといい」

レオンはレインを膝の上に乗せた。

「どんなことにも、必ず原因というのはある。そして、必ず誰かが悪いとは限らないんだ。色んな事が絡み合って、悪い結果になってしまうこともある。そして、目に写るもの、人から聞いたことが真実とは限らない」

「?」

レオンの言葉に、首を傾げたまま見上げる。幼いレインには、まだ少し難しいだろうと思いながらも、レオンは続けた。

「いつか、君は君の手で、この国の真実と穢れに気付くだろう。その時、今言った言葉を思い出してくれることを願うよ」

「……」

姉と同じ、どこか悲しそうに微笑むレオンに、レインは何も言えなかった。


「さて、この国の歴史はこれくらいにして、今日から狩りの練習をしないとね」

レインを膝から降ろすと、壁に立て掛けてあった大きな弓矢と、小さな弓矢を持ってくる。

「はい」

レオンから渡された弓矢を見て、小さく揺れる弦をぴょんぴょんと引っ張る。

楽器みたいで面白いと、レインは笑みを浮かべていた。

「まずは持ち方を教えるね。外へ行こうか」

「はい!……あ」

ティアのことを思い出し、とことこと籠へ寄る。

普段は籠に入れておいて、夜はレインが抱っこしながら寝ていた。

本当はまたずっと抱えていたかったのだが、レオンに、あまり腕に抱えるのは良くないと言われたため、昼間は籠の中だ。

安心するから、抱っこをしたかったのだが、師匠の言うことはちゃんと聞くべきだと思い、我慢している。

「行ってくるね!ティア!」