「はあ~。だるい」

 男が首を回し、よれた暗いスーツを煩わしく整えながら警察署内を歩く。

 四十も過ぎてそろそろ薄くなってきた頭髪を、どうしたもんかと悩む日々に若かりし日はナイスバディであった面影も今や皆無な嫁は完全スルーして久しい。

 ふと、受付にいる男二人をいぶかしげに感じ眉を寄せた。

「なんだ、あいつら」

「ああ。昔の事件を知りたいとかで」

 それを通りすがりに聞いていた後輩が立ち止まって説明する。

「なんの事件だ?」

「ほら。十四、五年くらい前にあった強盗殺人ですよ」

「ああ。そういや、あったな」

 それをなんで、外国人なんかが知りたがっているのか。あれは悲惨ではあったが、注目するような事件でもない。

「ていうかだ」

 捜査内容を部外者に教えられる訳がない。そんなことは関係者でも難しい。追い返されて終わりだろう。

 そう思っていた男の目に奥に通される二人が映り、そんな馬鹿なと信じられない気持ちで思わずあとを追った。