「咲桜に逢いたい……」
 

毎日来るのがお決まりの吹雪だけの部署で、項垂れながら呟いた。
 

最近は毎日咲桜が来てくれる。


ついでに勉強も見てやっているから、負担だけにはさせていないと思いたいところだ。


俺も、今まで付き合った人がいないわけではない。


でも、自分から誰かの存在を望んだのは初めてだった。
 

傍にいてほしいと願う人。
 

咲桜を帰したあとは決まって気落ちする。


それを振り切って、なんとか吹雪のところまで来ていた。


のだが、今日はちょっと重症だった。


なにせ咲桜を抱きしめて寝てしまうと言う、自分としては最高の思いをしてしまったのだから。
 

あー、なんで意識なかったんだろう……。
 

せめて咲桜を抱きしめている間、意識があったら。


……寝込んでいたからこそ、咲桜はそのままでいてくれたのだろうけど。


いや、もしもの話だ――。


どんな話をしていたかな。


咲桜が少しでも笑ってくれることを話せたらいい。


笑って……あれ? 自分、大概怒らせてしかいないような気がしてきた……。


「なにやってんの。キモいんだけど」
 

冷徹な声が飛んできた。


本気で考え込んでいるのをキモいって……吹雪は今日も通常運転だった。