ドライヤーを当てるときに整えた髪が若干乱れた私は、玄関の閉まる音を聞くと同時にその場にへたり込んでしまった。


び、びっくり、した……。
 

先生が手を置いた頭へ、自分の両手をやる。
 

心臓が止まるかと思った。
 

どうして先生はあんなことを言ったのだろう――まさか知られた? 


仮婚約なんて、近しい状態になったことに安心して、マナさんが? 


それとも先生を気に入っているようだった在義父さんが? 


話してしまったのだろうか――それで、あんな言葉をくれた?
 

頭があったかい。頬が熱い。
 

頬に伝うあたたかさは、先生のくれた言葉?
 

大丈夫だから。
 

私の過去を知っていても、いなくても。
 

そんな言葉をくれた人は、今までいなかった。
 

………先生に、優しさをもらった気がした。