そして、大ちゃんと会った日から2日が過ぎた。


水曜日の放課後。


私は、久しぶりに図書室の扉を開こうとしていた。


(帰りたい帰りたい、今すぐ帰りたい)


中に五十嵐が居る事は、確認済みだった。


大ちゃんの約束は破ってでもいいから、早く家に帰りたい。


この極限の緊張から、早く解き放たれたい。


けれど、私は彼との約束を破りたくなかった。



昨日、家から帰ってきた私にママがある報告をした。


『勇也、大ちゃんね、昨日駅前で倒れちゃったんだって。…でもね、大事には至らなかったみたい。今、日本とアメリカのどちらで手術をするか再検討をしているらしいわ』


『そっ、か…』


昨日、ママからの報告を受けた私は、


“大ちゃんも、自分と向き合おうとしているんだ。私も頑張らないと”


そう、決めたのだ。



図書室の目の前でうろうろする事、5分。


(大丈夫大丈夫、五十嵐はそんなに怖くないはず)


意を決した私は、そっと図書室の扉を開いた。



ガラガラ……


扉を開けると、真正面の机に五十嵐が座っているのが見えた。


彼は、見ていたスマートフォンから顔を上げ、そして固まる。


「安藤…?」


“来てくれたの?”


彼の目は、そう語っている。