彼女の家は町外れのアパートの一角にあった。

美術部の名簿に住所が記載されていたのを目にした時、僕が昔、お母さんと住んでいたアパートと同じ場所にあったため、妙に記憶に残っていた。

ここに来ると、いつも僕はお母さんとの嫌な思い出が頭を過った。

だからここは、無意識に僕が避けて寄り付かなかった場所だった。

「いまだに残ってるんだよ。お母さん。あなたにつけられた傷が」

僕は腹部にある火傷の跡を服の上から触った。

思えば、僕の性格は母という存在のせいで大きく歪められた。

僕にとって初めて他者に裏切られた存在が、他ならぬ母だった。

抑圧され続けた僕の幼少期の心は、時々、僕を押し潰さんとばかりに僕を支配しようとすることがあった。

僕はその度に恐ろしい妄想にかられたが、13歳の時には、その気持ちを上手くコントロールできるようになっていた。