昨日はよく眠れた。鏡を見ると、最近目立ち始めた隈が薄くなっていた。
昨日までの憂鬱な気分も薄まった様だ。


「フィウメ、おはよう」


一瞬ぎょっとしたが、昨日のことを思い出す。
そうか、フィウメになったのだ。


「おはよう」


メレンダは自分の席に戻り、僕は入り口で置いてきぼりにされていた。
我に返り、そわそわと自分の席にいく。


カバンを机に置き、ネックウォーマーを外す。
そして、机に落書きしているメレンダを見た。


一日だけの魔法ではなかったらしい。
熱くなった頬をぺたぺた触る。教室が暖かいからと言って誤魔化せるか。


人は、一瞬で人を好きになれるのか。


自分がよくわからなくなる。こんな単純な心でいいのか?
単純だから立場を奪われたのか?


カバンに顔を埋める。
相談出来る人もいない。そしてこれが初恋だ。


顔をあげてため息をつく。悩みがまた増えた。