誰もなんの会話もないままに、和と星夜の遺体は運ばれた。


床掃除をしていてもまるで自分の感情が麻痺してしまったかのように感じられた。


血の匂いはずっと鼻の奥にこびり付いていて、全然離れてくれない。


掃除を終えた後は教室の後ろにそのまま座り、ただ呼吸を繰り返していた。


先生は死なない。


雨もやまない。


悪夢はまだまだ続いていく。


精神的にも、肉体的にも限界が来ていた。


「大丈夫か?」


そう声をかけられると、大和がパックのリンゴジュースを差し出してくれていた。


あたしが好きな飲み物だ。


「ありがとう」


あたしはジュースを受け取り、どうにかほほ笑んだ。


「気分転換に自販機まで行って来たんだ」


そう言ってあたしの隣に座り、コーヒーを飲み始めた。