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5月になった。


生暖かい風が、新緑の香りを運んでくる。




「おはよっ。上野!」



「おはよう」




教室に入ると、三上くんがいつもの明るい笑顔で迎えてくれた。



そんな彼に対し、あたしも少しだけだけど、笑顔だったと思う。

ごく自然に。



あの日から、あたしと三上くんの距離感は、少し変わった。



というか、あたしが少しずつだけど心を開いてきたんだ。



鈍色だった心の色が、少し明るくなった気がした。



友達とふざけ合い、空を仰ぐように大きな声で笑う三上くんに目を向ける。




「はるって、本当バカだよな~」



「テストで”わかりません”って書くやつ、初めて見たんだけど!」



「正直に生きろって親に言われてるからなっ」



「ぶはっ! そーゆー意味じゃねぇだろ!」




三上くん、テストに”わかりません”って書いたんだ……。



素直っていうか、バカ正直っていうか。

アホじゃん。



呆れて心の中で笑っていると、HRの鐘が鳴った。



ぞろぞろと自分の席に戻るクラスメイト。



当然だけど、隣には三上くんが座った。