「わざわざ手伝ってくれて、ありがとうございます」

「これくらいやって当然よ」
 
私はミリィと一緒に洗ったシーツを干していた。
 
ミリィ一人に任せるのも申し訳なかったし、お世話になっている以上は何かお手伝いしたかった。

「まったくブラッドはどこに行っちゃったんだろう?」

「レオンハルトさんのところじゃないの?」

「そんなことより街に行って、女の子を口説いているかもしれませんよ!」

「そうなの?」

「ブラッドって女癖悪いんですよ! だからオフィーリアも気をつけてください!」
 
ミリィの言葉を聞いた私は目を瞬かせた。
 
私から見ても彼はとても整った容姿をしていると思うし、きっとモテる方なのだろうと思っていた。

一緒に街に行った時も知らない女の子たちに声を掛けられていたし。

「ミリィも大変ですね」

「本当ですよ! まったく」
 
起こりながらシーツを干すミリィは、寂しい表情を浮かべると言う。

「でも本当はブラッドには幸せになってほしいんです」

「ミリィ?」
 
シーツの入った籠を手に持ったミリィは空を見上げる。

「ブラッドは小さい頃に家族を亡くしていて、大変だった事もたくさんあったはずなのに、前向きに真っ直ぐ生きてて」
 
ミリィは優しく微笑むと言う。

「だから世界一幸せになってほしいの」 

ミリィの言葉を耳にしながら、私は一週間前のことを思い出した。

【俺は……自分なんて生まれて来なければ良かったと思っている人間だ。俺が生まれて来なければ、両親やセシルが死ぬことはなかったんだ!】
 
あの時のブラッドの顔は今でもはっきりと覚えている。
 
自分は死んで当然だと思っていたブラッドは、その気持をどこにぶつけたら良いのか分からなかった。

ずっとその感情を自分の中で押し殺して来て、あのときようやく口にすることが出来たんだと思う。