あの事件から三週間が経った。あの日の事件をきっかけに、魔法教会は道化師を正式にテロリスト集団と断定し、大きく指名手配する形へと移行した。
 
魔法警察の方も忙しいみたいで、病院で手当を受けたレオンハルトやミューズたちは、直ぐに仕事へと駆り出されることとなった。もちろん、そのことに一番反対していたのはミリィだ。
 
ミリィも無事に逃げられたみたいで、私たちの姿を見た時は大泣きしてしまった。そしてこっぴどく叱られた。

街の方も復旧作業が行われ、一番大きな被害を受けた聖母の愛大聖堂は、しばらく立ち入り禁止になるみたいだ。
 
こうして元通りの日常へと戻りかけているのに、未だにブラッドは目を覚ましてくれない。
酷い怪我を負い魔力も激しく消耗したせいか、しばらくは眠っているだろうと医者は言っていた。
 
そしてもう一つ不可解な出来事も……。
 
病院に運ばれたブラッドは直ぐに緊急手術が行われた。しかし手術を終えた医者から話を聞くと、【怪我は完全に塞がっており、命に別状はない】とのことだった。
 
それを聞いた私とレオンハルトは疑問に思った。あれだけ酷い怪我を負って、怪我が完全に塞がるなんて事が本当にあるの? もしかしてブラッドの身に何か起こっているんじゃ?

「ブラッド……」
 
私は優しく彼の髪を撫でた。
 
レオンハルトの配慮によって、ブラッドは手術を終えて一週間後には退院し屋敷へと戻る事が出来た。そしてそのまま自室へと運ばれた。
 
だから私は今ブラッドの自室にいる。時間が空いている時は、必ずブラッドの側に居るようにした。

目を覚ました時、一番最初に彼の声を聞きたいから。

「こんなところに居たのか? オフィーリア」

「お兄様……」
 
部屋の扉に寄りかかるように、お兄様が優しい表情を浮かべて立っていた。

「少し休んだらどうだ?」

「大丈夫です。私はこのままブラッドの側に居たいので」

「そうか」