お隣の席の睦月君は少し変わった人だ。

小テストだろうと学力テストだろうと定期テストだろうと100点をとったテストを折り鶴にしてしまう。

常に平均点ギリギリの私からすれば、100点満点を取れること自体がすごいことで、もしとれたならば自慢したい程なのに、彼ときたら何でもないことかのようにそのテストを折ってしまう。

そしてその鶴を私の机の荷物掛けに吊るすのだ。

それはさながら何かの儀式のよう。


「花村ーー、いい加減止めないとお前の机が睦月の鶴に浸食されるぞーー」


先生も時おり声を掛けてくれて、止めるチャンスはあるのだけれど私は止めてと言うつもりはない。


「あはは」


ただ曖昧に笑うだけ。

だって、そんな変な儀式だとしても私にとっては只一つの彼との繋がりなのだ。

勇気が出せない私の、只一つの頼り綱。


「先生、ちゃんと花村さんに許可とってるから大丈夫ですよ~。ね、花村さん」

「う、うん……!」

「あ、そうだ。今度花折ってあげるね、花。花村だけに、花好きそうだし」


だって、私の机を鶴置きにされたとしてもそんな会話を投げ掛けてくれるのだから、これくらいお安いご用だ。