ーー放課後。

「宮ちゃん……あの、本当に?」

「何言ってるの。由李が"お礼言いたい"って言ったんだよ?」

「言ったけどー!」

現在、普通科校舎の昇降口前……

ではなく、特進科の昇降口。

足を踏ん張って、普通科校舎に連れていこうとする宮ちゃんに「無理無理」と抵抗する。

それは、教室に戻った後。

"「二人にお礼が言いたい」"

そう言うと、彼女は何を思ったのか。SHRが終わると直ぐ、私の机に駆け寄った。

「ほら、早く帰る支度して!」

「う、うん!どうしたの宮ちゃん、今日何かあるの?」

「い、い、か、ら!」

そう急かされて、教室を飛び出すように出てきた。

そして、冒頭に戻る。

「明日になって、勇気出なくなったら困るのは由李だよ」

「そうだけど……」

「……あのね、由李。相良君は普通科だけど、特進科の女子にも人気あるの。知ってた?」

「も、って事は……普通科の女の子にも?」

「当たり前だよー」

やっぱり……相良君優しいし、素敵だもんね。

納得しつつ、凄く寂しい気持ちになる。

( 普通科の女の子なら、相良君のこと、もっと近くで見られるんだ。あの笑顔も…… )

「で、でも……」

「私がいるでしょう?」

( 宮ちゃん…… )

普通科の人苦手なのに。それでも、私の為に一緒について来てくれる気なんだ。

私は顔を上げて抵抗をやめると、強気な笑顔でにっこりと微笑む彼女の手を、そっと握った。

「宮ちゃん、ありがとう。大好き」

「……っ、もう由李!他の人の前で、そんな可愛い顔したら駄目だからね!」

「えぇ、してないよ」

「してるのー!」