「ああぁ! うわぁぁーーーーー!」


 クレーターさんが結界の底で背中を丸めて、頭を抱えて泣き叫んでる。


 過去の記憶のすべてを見終えたあたしたち全員、身じろぎもせずに、その悲痛な泣き声を黙って聞いているしかなかった。


 戦闘経験もないクレーターさんが、なんであんなにも水園さんを助けに行きたがったのか、分かったから……。


 水園さんの身にもしものことがあったら、水晶さんに顔向けができないからだ。


 今度こそ本当に守りたかったんだ。自分の手で。


 かつて、自分の手で死なせてしまった娘への罪滅ぼしに。


『父親の愛の前に、立ちはだかるものなどありはしないのだ』


 虚勢を張って必死に叫んでいたクレーターさん。


 どんな思いで、その言葉を口にしていたのかと思うと……。


「小浮気の罪の意識の深さが、周囲の水に反応したのであろうな」


 絹糸が、ポツリとつぶやいた。


「自分の一族と娘を守るために、もうひとりの娘を犠牲にせざるをえなんだか」