私は部屋のベランダから外の景色をみた。

雪が降っているので、地面が段々と白くなってきていた。
だがそれを確認出来るのはこの旅館の敷地内の地面だけだ。

旅館を取り囲む壁は高く堂々としている。
まるで小さい城のようだと感じた。

この旅館。例えるなら昔貴族が住んでいた寝殿造に似ている。
その大きな庭には古池や松の木といった歴史を感じさせてくれる。

だが一つ気掛かりな事があった。
庭に多くの犬が飼われていた。
目は鋭くギラギラして、人間も普通に襲ってしまう。
一応首輪はしていて、柵はあるし、この旅館から少し出ても大丈夫なのだが、もしも子供が近づいて噛まれたりしたら危険だ。
何で犬を...
防犯のためなのだろうが、自分達も危険なのに...
それにあんなに多くの犬の餌分のお金はあるのか?この旅館に...

ガラッ

身体をビクッと震わし、後ろを見るとそこには実里さんが正座をしていて頭を下げていた。


「失礼します。」


あの電話以来、神経を張り詰めたり考え事をしている時に生活音だけでもあるとすぐあの女の人のことを考え、過剰反応をしてしまう。

この旅館に入った以上。このことは大切なのだが、普通に疲れてしまう。