「ぶっさいく」



瑞季くんが私の涙をハンカチで乱暴に拭う。



全部夢みたいだった。

瑞季くんと喋っていることも。

瑞季くんが、間接的ではあるけれど、
私に触れていることも。




「泣き止んだ?」


「うん……ありがとう」


「そんなに俺と喋りたかったの」




呆れたように、瑞季くんが小さく笑った。


久しぶりに向けられたその表情に、涙が再び溢れ出そうになるのをぐっと堪える。



「喋りたかったよ……ずっと」


「……そう」



小さく呟いて、瑞季くんはまた笑った。


窓の外に視線を移しながら

どこか、寂しそうに。


冷たい風が瑞季くんの前髪をさらさらと揺らす。




「じゃあちょっと喋ろうか。

どっか、カフェにでも寄る?」