迎えに来たお母さんは、私と満を泣いて抱きしめた。優深は無事に帰ってこれたのか聞くと、優深は家にいるらしい。車の中で、私はずっと今日の作戦の事を話し続けた。

「仁意那、ちょっと髪短くなった?」

髪の毛は少し伸びたけど、お母さんは気付いた。私は、気のせいじゃない?と言って誤魔化した。

家に帰ると、今日の事はテレビで報道されていた。ソファーで座っていた優深が、チャンネル変えて!と言った。驚いて固まった私の代わりに満が変えてくれる。
私は優深がチャンネルを変えてほしいと言った理由がやっとわかった。きっと、思い出してしまうからだ。
優深は自分の部屋で休むことになった。お母さんが、誕生日パーティはまた今度にしようと言った。

次の日、お母さんの携帯に学校からメールが来た。授業は遅れているが、3日休みをもらえた。その分夏休みとかが減るらしい。そして、一部の生徒は警察に呼び出された。一部の生徒とは、反乱を起こした生徒である。
私は満と一緒に警察署へ行った。そして、あの時何があったのかを聞かれた。私があの時の事を話すと、少しやり過ぎだと注意された。次に、錐山が学校内でどんなことをしたか教えてほしいと言われた。私は仕事のことや洗脳のことを話す。ここまでは普通に言えた。けど、だんだん二回目の脱出に近づいてくる。

「見つかった後何があったか言える?」

言わなきゃと思ったけど、声が出ない。もう言わなくていいかな……?誰か代わりに行言ってくれないかな……?ここで言わなかったら……
そういえば、朝に満が言っていた。この事件の後も錐山は悪くないと言い張る人がいると……その人たちはきっと刑を軽くしようとするだろう。なら、錐山が何をしたか言わないと……

「いつも見ていて腹が立つと……女子と思いたくないと言われて……髪を切られました」

私は言えた。いじめられたときは、何をされたか言えなくて、証拠も無くて被害妄想だということにされた。中学生になった後も私はその時の事を思い出しては誰もいないところで泣いていた。
でも、今度は絶対に無かったことにはさせない。