目を開けると見慣れた教室の床があった。


老朽化が進み黒ずんできた木の床に木目が、すぐそばにある。


起き上がってみると頭がフラフラして、空中に浮かんでいるような感覚がした。


あたし、どうしたんだっけ?


思い出せずに周囲を見回すと、いつも使っている砂川高校2年A組の教室であることに間違いないとわかった。


教室の床にはまだ数人の生徒たちが目を閉じて横たわっていて、その顔の全員が2年A組のクラスメートであることがわかった。


「有紀……」


あたしは手を伸ばして届く範囲にいた、夏目有紀(ナツメ ユキ)の体を揺さぶった。


有紀は眉間にしわを寄せ、そしてゆっくりと目を開いた。


「奏(カナデ)?」


有紀があたしを見て不思議そうな顔を浮かべる。


「スマホの電波届かないんだけど」


そんな声が聞こえてきて振り向くと、教室の中央あたりに辰宮千鶴(タツミヤ チズル)が立っているのが見えた。


千鶴はあたしより先に目覚めていたのか、その手にはスマホが握られていた。


あたしと有紀もポケットからスマホを取り出して確認する。


電波を示す光がすべて消えている。


「この教室電波届いてたよね?」


有紀が聞いてきたので、あたしは「うん」と、頷いた。