「……お母さん」


「えっシキ?」



病室に入ると、ぼーっと外を眺めていたお母さんが驚いて振り返った。



その顔は最後に会った時よりも、ずっとやつれていて、胸が締め付けられた。




「あんた、なんでここにいるの?」


「んー?やっぱりこっちに来たのっ」


「でも翔空くん……」


「翔空とは、別れたよ」



あたしの言葉に、お母さんの目が戸惑ったように揺れる。



「あんた……」


「あたしの事はいいの!お母さんの荷物とか、持ってきたからね」


「家に行ったの?」


「うん、あたしの荷物も置いてこなきゃ行けなかったし。お父さんから連絡あって、びっくりしたよ。でも思ったより元気そうで良かった」



明るくそう言って、あたしがガサゴソと鞄をあさり始めると、お母さんは複雑そうな顔で黙り込んだ。



きっと、気づいてるんだよね。

あたしの言葉が嘘だってこと。


翔空への別れなんて一方的だし、翔空自身はまだこの事を知らないはずだもん。



今日の夜……って言ったから。