いくら思いだそうと頑張ってみても今日の日付が出てこなくて、あたしは大きくため息をはきだした。


自分の名前や学校名はすんなり出てくるのに、どうして日付は抜け落ちているんだろう?


これも、この空間を作った人間のたくらみなんだろうか?


でも、なんのために?


こんなに混乱させて、一体なにが目的なんだろう?


また思考回路が迷宮へと入り込もうとした、その時だった。


ドンッ!!


と大きな音が車内に響き、車両が揺れた。


一瞬にして凍りつく空気。


それがなんの音なのか、みんなすでに理解していた。


「い……嫌……」


窓へ視線を向けてそれを見ていた愛奈が小刻みに震え始める。


その恐怖が痛いほどあたしの中に入り込んでくる。


「あ、愛奈……落着いて」


あたしは愛奈の手を握りしめた。


愛奈を落着かせるために握りしめたあたしの手も、小刻みに震えている。