結婚するとなったら、後は早かった。

カナはあっという間に、パパやママ他みんなに報告してしまい、わたしたちは繰り返し「おめでとう」の言葉を贈られた。



許してくれたはずのパパは、最初、やっぱりムスッとして、それがわたしをホッとさせる。

だけど、カナから



「おじさんをお義父さんって呼べる日が楽しみです」



なんて言われて、パパの頬はふわっと緩み、笑顔が浮かぶ。

そうか、こうやってパパに結婚の了解を取ったんだ……そんな事も垣間見えて、何だかとても楽しかった。





あの日以来、カナの部屋に遊びに行くことが増えた。

最近、お邪魔するたびに、おばさまがお菓子を用意して待っていてくれる。



「陽菜ちゃん、いらっしゃい! 今日はね、イチゴのタルトを作ったのよ」



おばさまが満面の笑顔でわたしを出迎えてくれる。

カナは、そんなおばさまを苦笑いで見ている。



「ごめんね、ハル。食べてやってくれる?」

「もう、失礼な子ね」



そう言いつつも、おばさまは楽しそう。



「あの、もちろん喜んでいただきます」

「ありがとう。後で持っていくわね」



カナの部屋にお邪魔した少し後、おばさまが出してくれたのは小さなカップ型のイチゴタルトとハーブティー。

形の良い真っ赤なイチゴが綺麗に並んで、宝石のようにキラキラと輝いていた。



「わあ、美味しそう」

「陽菜ちゃん、喜んでくれるから、作りがいがあるわ。男の子なんてホントつまらないのよ」



おばさまの言葉にカナが隣から突っ込む。



「ちゃんと食べてるじゃん」

「一度はいらないって、必ず言うじゃない」

「だから、オレ、そんなに甘いもの好きじゃないし」

「……それがつまらないって言ってるのよ」