九月半ばに
須寿垣から坂北へ転校した。

中途半端な転校生なため、
新しいクラスでは
質問責めにあった。

色々と適当に誤魔化した。

放課後、校門を
出ると満彦が
停めた車に寄りかかりながら
煙草を吸っていた。

「よう」

須寿垣はどうしたんだ?

この時間なら
向こうだって、
帰りの時間のはずだ。

「校長がお前を
迎えに行けって言ったんだよ」

言葉にする前に
満彦が応えた。

顔に出てただろうか?

何にせよ、
校長がねぇ……

『へぇ~
まぁ、
迎えに来てくれて
助かったぜ。
ありがとうな』

煙草をくわえたまま
助手席のドアを開けてくれた。

俺はエスコートされる姫か‼

内心つっこんでみる。

**翌日**

昨日のあれを見られていたらしい。

転校二日目、またもや
質問責めに合う羽目になった。

「昨日、迎えにに
来てた人誰?」

どぉ返そうか……

素直に恋人と言うべきか?

いや、同性愛に嫌悪感を
抱いている奴も中には
いるだろうし、無難に
親戚と言うべきか……

困った……

「カッコイイ人だったね」

そりゃぁ、満彦はカッコイイけどな。

いい父親だし、いい恋人だ。

勿論、いい教師でもあった。

じゃなきゃ、いくら
カッコイイといってもあんなに
人気者にならない。

「そうだな」

満彦がカッコイイことなんて
わかりきってることだ。

昼休みになり、
満彦にメールをした。

あっさりと“恋人”だと
言えばいいと返って来た。

まぁいいか。

教室に戻ると
やっぱり、休み時間と
同じ質問が繰り返された。

「三神君、あの人誰なの?」

はぁ~

深呼吸をしてから
口を開いた。

『恋人』

教室に変な空気が流れる。

だからといって
別段驚かない。

皆、引いただろうか?

それならそれでいいのだが。

蜘蛛の子を蹴散らすように
俺の席から離れて行く際に
一人の呟きが聞こえた。

「何あれ、
あんな嘘言ってまで
私たちにあの人を
関わらせたくたにのかしら」と。